『スポーツを通じた平和とは何か?』を考えさせてくれた「戦火のランナー」上映会&トークショー



東京オリンピック・パラリンピックが終わってから、はや2ヶ月が過ぎました。6年間オリンピックに関わってきた私達の団体にとって「オリンピックレガシーに今後どう関われるか」ということが大きな課題となっていました。

過去を振り返ってみると、NPO法人おもてなし国際協議会としてオリンピックに深く関わることができたと思うものは、コロナ禍でも続けた「ホストタウン活動 (アメリカ、台湾) 」で、東京2020大会後には八王子市から推薦を頂き、9月28日に内閣官房からホストタウン功労賞まで頂くことになりました。

しかし10月半ば、これまでホストタウン活動の相談口であった八王子市オリンピック・パラリンピック推進室が解散になったため、活動の継続・発展のために、全国の中でモデル的な活動をしたホストタウンを探して、交流したいと思うようになりました。

そこで思い出したのが、以前facebookで目にした、南スーダン出身のマラソン選手のドキュメンタリー映画「戦火のランナー」と、その映画のアンバサダーで、東京2020大会出場を目指す南スーダン選手団のホストタウン、前橋市との繋ぎ役となった、元JICA南スーダン事務所長の友成 晋也さんです。

今年6月5日に渋谷の映画館で開催されていた、上映会「戦火のランナー」&友成さんのトークショーというイベントをfacebookで見つけ、参加する気満々だったのですが、他の用事とたまたま重なってしまい、どうしても行けなかったのです。

そこで、無理を承知で、友成晋也さんにイベントのゲストをfacebookのメッセージから打診したところ、なんと、快く引き受けて下さいました!

「戦火のランナー」は、ビル・ギャラガー映画監督 (アメリカ) が7年の歲月を掛けて制作したのですが、コロナ禍だったこともあり、偶然にも東京オリンピック・パラリンピックが開催される直前に、日本で初めて上映されるようになったのだそうです。

主人公のグオルは、難民キャンプで保護されていたところから、幸運にもアメリカに移住するようになり、アメリカの高校でマラソン選手としての頭角を表し、2012年のロンドンオリンピックを目指すようにまでなります。

しかし、2011年に独立した南スーダンには、まだオリンピック委員会がなかったため、出場が危ぶまれていましたが、国際オリンピック委員会は、「国のない男」と呼ばれていたグオル選手を、個人参加選手として、ロンドンオリンピックの出場を認めるようになります。

グオル選手はオリンピック開催の直前にオリンピック出場が決まったことで、喜びも束の間、準備する間もなく、疲れた体でマラソン競技に参加することになってしまいました。

試合当日、コンディションの悪い状態で走ることになり、疲労困憊し、途中棄権を考えるしかなくなった時、南スーダンの女性たちがマラソンコースの沿道で南スーダンの旗を掲げて熱く応援している姿が見えたのです。

彼女たちの応援する姿に力を受け、最後まで走るグオルの姿を、紛争で明け暮れていた南スーダン人たちが現地時間と同じ時間に、一喜一憂しながらテレビ観戦をしていました。その瞬間、民族の違いを超えて、南スーダンが一つになったのです。

メダルとは関係のない、まさに、オリンピックの目指す平和の世界が凝縮されている光景でした。

映画「戦火のランナー」を見ながら、感動冷めやらぬ中で、ゲストの友成晋也さんのトークショーに移りました。

トークショーの最初から最後まで、友成さんの一言一言は、とても深くて、全ての言葉をメモしたいほどでした。

グループワークのテーマにもなった「スポーツは国際交流か、国際協力か?」というオリンピックやホストタウンにも関わる、根本的な友成さんの話は、私を含め、たくさんの参加者に気付きを与えてくださいました。

「国際交流は、正面を向き合うこと。国際協力は、同じ方向を向いて進んでいくことだと言えます。すなわち、スポーツが交流で終わるのか、スポーツを通じて、何かを作りながら、成長していくことなのかの違いがあると思います。例えば、前橋市だと、ホストタウン活動を通して、街が活性化した、市民の個性が輝くようになった、グローバル人材を育成できたならば、交流でなく、協力になるのです。」と、私達のホストタウン活動の今後の方向性を示して下さるメッセージを残してくださいました。

また、最後に総括的な一言として話された、「紛争国の特別な問題だけでなく、すべての問題の解決は、結局、人づくりにかかっています。学校で勉強をし、能力を上げることができても、それだけではいい社会になりません。人を作る上でもっと必要なことは「人の心に訴えかけるもの」、例えばスポーツ、音楽、演劇などが大事です。特にスポーツの場合、必ずチームワークが求められますが、そのチームワークの延長線上に、まさに社会が存在してるのではないでしょうか?だからスポーツは社会を平和にしていく大事なツールなんです。」という言葉がとても印象に残りました。

今日映画を見て、感じ、トークショーで受けた答えを早く実践して、次のステップに上りたいという思いでムズムズしています!

友成さん、スタッフのみなさん、最初から最後まで関わって下さり、ありがとうございました!