前橋市が南スーダンのホストタウンになった感動の経緯!



南スーダン共和国は、スーダン共和国から南部10州が分離・独立を果たし、2011年7月に世界一新しい国としてスタートしました。



私は東日本大震災後の2011年4月に、戦場ジャーナリスト 故 後藤健二さんのトークショーに参加したのですが、そのトークショーの中で初めて南スーダンの独立についての最新情報を聞き、とても衝撃を受けたのを覚えています。



しかし、その後の2013年12月、2016年7月の二度にわたり、民族間の激しい争いがあり、国民の3分の1にあたる400万人以上が難民や国内避難民となったのです。



もともと、スーダン共和国で国民体育大会を行っていましたが、内戦によって中止になっていたところ、JICAが2016年に「National Unity Day(国民結束の日)」と名付けて復活させ、それ以降、武力紛争があっても大会を継続させてきたようです。



National Unity Day(国民結束の日)という言葉からも想像ができるように、単なるスポーツ大会ではありません。



JICAが中心となり、南スーダンの10州からそれぞれ陸上選手、バレー選手、サッカー選手などを呼んで、10日間の全国大会を行うのです。



そして、各州から集まってきた選手たちを、JICAが設立した職業訓練所で宿泊させ、選手たち同士が一緒に食べ、寝泊まりできるようにし、交流のなかった、また、争い合っていた地域同士の交流を進めてきたのです。



スポーツを通しての平和構築を具体的に進めてきたJICAと、それに協力して一緒に「National Unity Day(国民結束の日)」を作ってきた南スーダン国民の皆さんの撒いた種は、2021年に、東京オリンピック・パラリンピックで素敵な平和の実を結ぶことになります。



11月13日のイベントのゲストである 友成 晋也さんは、ある日突如、職場の上司に南スーダンへの赴任を打診され、2018年に南スーダンJICA事務所長として赴任しました。



赴任一年目の2018年は、世界幸福度ランキングで南スーダンがワースト第1位であり、JICA事務所の日本人スタッフは2016年に全員国外退避して、やっと2018年の夏頃に復帰予定という、先の見えない状況でした。



友成さんは南スーダンJICA事務所長在任中に、東京2020大会があることを分かり、南スーダンのホストタウンとなってくれる自治体を探すようになリました。そして、前橋市がホストタウンに積極的だという情報を聞き、前橋市長と交渉するつもりで会いに行ったのですが、会うやいなや「南スーダンのホストタウンをやりましょう」と言ってくださったそうです。



アフリカ諸国はもともと日本の自治体との繋がりが少なく、また、選手をサポートするためのホストタウン側の出費が多いことが予想されるため、ホストタウン先がなかなか決まらないのが普通だったので、南スーダンをホストタウンとして受け入れた前橋市のケースは、有り得ないことでした。



前橋市長が南スーダンの練習状況がどうなっているかを友成さんに聞かれた時、友成さんは「全国大会が行われた首都ジュバにあるナショナルフィールドでも、石があちらこちらにごろごろ転がっていて、靴のない人は裸足で大会に参加している」と答えました。



しかも、陸上競技場と言えば、南スーダンにはその場所一箇所しかないのです。 



National Unity Day(国民結束の日)で頭角を現し、東京オリンピックの選手として来日したアブラハム選手も、家から17キロ走って、その陸上競技場で練習し、再び17キロの道のりを帰って来ていたとのことでした。



前橋市長は「そんなところでは練習はできない。前橋市は環境が整っているから、前橋市に南スーダンの選手団を呼ぼう」と仰り、クラウドファンディングやふるさと納税などで、選手団の滞在費約3000万円を集めたのです!



その後も、コロナ禍で東京2020大会が1年間延期されることが延期が決まり、記者会見で「寄付をお願いしたい」と訴えると、さらに1500万円以上のふるさと納税が集まったのだそうです!



アブラハム選手は東京オリンピックでは予選で敗退しましたが、3分40秒86の自己ベストを記録しました!



母国の希望のために走ると話していたアブラハム選手は、「私の国は何度も衝突してきた。オリンピックを経験し、団結や譲り合いの大切さを知ったので、帰国後はその尊さを人々に伝えていきたい」と語ったそうです。



前橋市は、2024年のパリオリンピックまで、東京オリンピックのレガシーとして、南スーダンの選手を半年に1人ずつ受け入れようと計画をしているようです。



このような取り組みは、継続・発展できるよう、日本全国、世界の多くの方に関心を持ってもらいたいですし、11月13日の「戦火のランナー」上映会&トークショーでは、先程の話をさらに掘り下げた話しも聞けたらと思っています。



是非、11月13日のイベント「戦火のランナー」上映会&トークショーにもお越し下さい!