「真のおもてなし」は、平素の生き方で決まる!

2013年に、2020年東京五輪招致の滝川 クリスタルさんのスピーチによって、おもてなしという言葉が、世界的に有名になり、2013年に流行語対象になったことは、記憶に新しいと思います。
そこでは、落とした財布がほとんど戻ってくる。街は治安が良く、清潔で、公共機関が整っている等の話をされていました。
しかし、それで、おもてなしの本質が、分かったと言えるでしょうか?
おもてなし国際協議会という名前をつけて、4年に半なりますが、団体設立の理念に『おもてなし国際協議会は、2020年の東京オリンピック開催に向けて、「質の高いおもてなし」とは何かを、外国人の目線に立って研究し、清潔で、温かく、誠実な対応ができるホスピタリティ精神を民間レベルから醸造していくことを狙いとしています。』と書いているように、表面的なおもてなしでなく、質の高いおもてなし、真のおもてなしとは何かを、よく話し合ってきたのですが、訪日外国人だけでなく、多文化共生や、会社、学校、家庭など、様々な人間関係、さらには、自分に繋がる言葉として、すっきりと言い表す表現を探していました。
千葉では、オール千葉おもてなし隊を作っていて、「思いやり」「スマイル」「クリーン」を合言葉にして行動しているとのことです。
やっていることは、分かりやすいのですが、おもてなしを、その3つの単語で言い表すのも、難しいと思いました。
そんな中で、元プリンスホテル取締役、元帝京大学教授の河野 正光さんによる「東京オリンピックを控え、今話題のおもてなしとは?」というテーマの講演が、八王子東急スクエアの12階ホールで行われるのをビラで目にして、早速、聞いてきました。
まず、仰っていたのは、「おもてなしに関する本は、ホスピタリティ業界に関して書かれているのが、70パーセント以上だ。しかし、日常の職場、学校、家庭での人間関係づくりにも、おもてなしは、大きく生かされるし、おもてなしによって、自分磨きも、できるようになる。」と話して下さいました。
なので、おもてなしが、多文化共生の課題も解決してくれるということです。

おもてなしは、相手を慮る、「思いやり」や、「心遣い」を『以って成す』ことだ、と、河野さん式のおもてなしの方程式について、いくつか例を挙げて、教えて下さいました。
①東京五輪招致時の滝川クリステルさんのスピーチは「日本の安心、安全を以って、訪日客が感動することを成す。」
②(オバマ大統領が、子供の頃、ご両親と一緒に鎌倉の大仏の前で抹茶アイスを食べた思い出を知って、宮廷晩餐会で抹茶アイスを、オバマ大統領に出したことで)
「抹茶アイスを以って、オバマ大統領が、感動することを成す。」というもので、思いやる心が、「成す」という行動になって、はじめておもてなしになるという、分かりやすい、方程式でした。

また、おもてなしは、表無し、すなわち表も裏もない、誠実で、見返りを期待しない言葉だと。なので、目の前にいる方の心遣いだけでなく、今までに関わった方への心遣い、「3ヶ月前に出会ったNさんは、今回の台風で大丈夫だったのだろうか?」と連絡を取ってみる、これこそが
真の「おもてなし」だと言えます。


また、おもてなしには、目に見える部分と、目に見えない部分がありますが、目に見えない「おもてなし」が準備できるか、どうかで、おもてなしの質が決まるという話は深い話でした。おもてなしの歴史は、茶道の作法や、精神が源流だと言われていますが、客を迎える時に「打ち水」をして清め、季節に合わせた「掛け軸」を用意する。それが「しつらえ」というおもてなしの演出だと仰っていました。


最後に、おもてなしのポイントは「気づき」だと仰り、メジロという小鳥の写真を使って、「この写真に何匹、メジロがいるか、当ててみてください。」と尋ねられました。一匹は誰でも気づくのですが、葉っぱと同じ色をしているので、分かりにくくなっています。しかし、メジロは「つがい」で生息する鳥なので、もう一匹いるはずだと気づこうとする力が大事であると。
人と会って相手の表情や、素ぶりで、早く気づいて、声かけができること。例えば「顔色が優れないけど大丈夫?」「仕事、代わりにしておきますよ。」と繋がります。
気づく力が、おもてなしマインドの高い人だから、気づこうとする努力をしましょうと話してくださいました。
それと関連して、紹介してくださった色紙の一文が非常に印象的でした。「花も美しい。月も美しい。それに気づく心が美しい。」

日本の古来から伝わる、おもてなしの精神は、世界に誇れるものだと思います。しかし、私が感じることの一つに、特別な時に、特別な人に対する「おもてなし」は、よくできるけれども、普段の生活との差が大きいということです。
例えば、観光客への「おもてなし」には力を入れ、毎年、海外からの観光客は増加していますが、在留外国人を住みにくくしている、言葉の壁、制度の壁、心の壁が、なかなか、崩せません。

普段から、どんな人にも、思いやりのある「おもてなし」の精神を行えるように、意識して、自分作りに励むことで、表面的な、瞬間のおもてなしではない、相手に長く感動を与える「真のおもてなし」が生まれます。平素から、思いやり、気づきの習慣をつけていく大事さを改めて実感するようになりました。