オンライン 台湾魅力探訪!〜ドキュメンタリー映画監督 酒井 充子さんと共に〜



12月5日に、オンライン台湾魅力探訪!〜ひと・土地・物語、そして、ちょっとグルメ〜企画で、ゲストのドキュメンタリー映画監督 酒井 充子監督が、オンライン台湾旅行の案内人となって下さいましたが、コロナ禍で台湾ロスを感じていた方たちの癒やしの時間になりました!

酒井 充子さんは、台湾三部作と言われるドキュメンタリー映画「台湾人生」「台湾アイデンティティ」「台湾万歳」を作成された著名な映画監督です。私の所属している一般社団法人 台湾世界遺産登録応援会の楽習うより慣れ会で、2020年10月17日に台湾の離島 蘭嶼のオンラインツアーをされていて、イベント後に挨拶させて頂いたのが最初の出会いでした。

よくある台湾紹介でなく、酒井さんが映画作品で伝えようとしている「台湾を通して日本のことを見る」という視点で、ぜひ私達のイベントでもゲストとなって頂きたいとお伝えしたところ、喜んで引き受けて下さいました。

今回のオンライン台湾ツアーは、主に酒井さんが以前映画撮影に携わった場所で、台北⇒九份+基隆⇒阿里山⇒台南+高雄⇒成功鎮⇒花蓮+瑞穂⇒蘭嶼島と、全部で10箇所を70分で巡るコースでした。

普通の観光旅行ではなく、台湾の歴史や、出会った人との経緯、文化背景を分かりやすく話しながら、一箇所7分で廻ることって可能なんだろうかと、スタッフの間では期待半分、心配半分でした。

しかし映画監督らしく、時間に強弱をつけながら、酒井さんでなければ出来ない、台湾の歴史をギュッと凝縮した内容を話してくださり、短い時間で台湾を満喫した気分になりました。

オンラインツアーの出発地は台北でしたが、日本統治下の建物である台湾総督府と、228記念館の2箇所に行くことになりました。どちらも、今でもボランティアの方が案内してくれるようです。

酒井監督がその2箇所に最初行かれた時には、ショウ キンブンさんという方が直接紹介してくださいました。ショウさんは元日本兵で、ビルマの地獄の戦いと言われる「インパール作戦」も参加されたのですが、従軍途中でマラリヤに罹り、不幸中の幸いで帰国が出来たそうです。

当時台湾人でどれだけの方々が日本軍として従軍したかというと、21万人もの方々で、その内の3万人もの方が亡くなったそうです。

戦後、台湾は日本国ではなくなり、中華民国領に復帰するのですが、インドネシアのモロタイ島での約30年の潜伏の後に発見された中村輝夫さんは「台湾人元日本兵」として扱われ、日本人ではないという理由で、6万円しか補償金を貰えなかったそうです。(その後、王育徳さんという方による台湾人元日本兵士の補償請求運動等により、200万円が支払われることになったらしいです。台南では、酒井監督に王育徳記念館を紹介して頂きました。)

次に、「千と千尋の神隠し」のモデルと言われている九份に移動しました。九份の名前の由来ですが、その場所に家が9軒しかなく、9軒分の荷物を運んでいたところから、九份と呼ばれたそうです。

酒井監督はもともと映画鑑賞が大好きな方だったのですが、蔡明亮監督の映画「愛情万歳」を見たことで、台湾に行きたい思いが湧いたそうです。そして、台湾で空前のヒットとなった映画「非情城市」のロケ地として九份を紹介して下さいました。

そこから更に上に登ると、人通りが少なく見晴らしの良い金瓜石(金がたくさん採れた場所)という場所があり、その場所に建っている、日本統治時代に建てられた神社を見ることができます。酒井監督はその神社を見たときに、(こんなところまで、日本の足跡があるのだ)と感慨深くなったそうです。

そこから南に下って、阿里山茶や阿里山鉄道で有名な阿里山を紹介してくださいました。

阿里山は原住民のツオ族が住んでいる地域で、独特な形をしたクバという建物の写真を見せて頂きました。その藁葺の建物は男性しか入れない場所で、男性たちは何日かそこに泊まって大人になる教育を受ける、まさに「成長の場所」だそうです。

また、酒井監督の作成したドキュメンタリー映画「台湾アイデンティティー」に登場する、ツオ族の高菊花さんという元女性歌手の方のお父様の話を聞かせて頂きました。

日本統治下時代、お父様が日本人学校に通っていながら、ブラスバンド部に所属していたのですが、酒井監督はその時のブラスバンド部員の写真を見せて下さりながら「当時の日本の学ランと全く同じですよね。日本人の方たちは、台湾が昔、日本だったことを忘れてはいけないと思います」と強調されていました。

高菊花さんのお父様は、原住民の父と言われるほどの方だったのですが、中華民国の戒厳令下の混乱の中で、反乱罪として捕まり、2年後に死刑に処せられます。その2年間に家族に書き送った47通の内の42通は日本語で書かれていて、日本語の文章の奥深さと美しさに驚かされました。

台東にある成功鎮では、アミ族のチンさんが船の先端に立って、銛で突く漁をされているチンさんという方の話をしてくださり、その家族と親しくしている義兄弟(友達以上、兄弟未満の関係)が9組集まって仲睦まじく食事会をしている光景を写真で見せて下さいました。

「チンさんが『台湾社会は冷たいので、このような形ででも、絆を深めたい』と話していたことが新鮮だった」と酒井監督は仰り、情深い台湾のイメージとは違った台湾の別の側面を知ることができました。

その話の中で出てきた、日本では聞くことのない「義兄弟」という言葉に参加者の方々の反応がとても良かった為、その後の交流会でも「それでは、これから義兄弟作りの時間ににしましょう」と司会が参加者に話していたのは、とても微笑ましかったです。

アンケートでは、以下のような意見を頂きました!

「台湾全土の輪郭が初めて分かったのと、今まで断片的に知っていた台湾の歴史のパズルが繋がって、より自分の身近な存在となった気がして、台湾に対する情が沸きました。」

「このツアーで台湾の少数民族の話が聞けるとは思わなかった。本省人と外省人、少数民族と台湾はダイバシティだと思い、もう少し知りたくなりました。」

「酒井監督でなければ語れない台湾の歴史、人物のお話を伺うことができてとても良かったです。」

今年のおもてなし国際協議会のイベントはこれで終わりましたが、来年に向けて、オンラインで出来る可能性にチャレンジしたイベントでした!スタッフの皆さん、参加者の皆さん、共にして下さりありがとうございます。

台湾のホストタウンの八王子市で活動する私達は、オリンピックレガシーを残すべく、より親密な台湾との関係を模索して行きたいと思っています!